「無限の住人」の沙村広明による、非常で重厚な少女達の物語である。本人の談話によると、赤毛のアンのような話を描きたかったそうだが、共通するのは時代背景や孤児院といったものくらいで、夢も希望もない、とある西洋の近代国家の中で行われていた、狂った祭りが題材である。
孤児院の少女達の憧れは、ブラッドハーレー家という、国内有数の資産を持つ貴族の養子となり、その子供等が活躍するという歌劇団に入って舞台に上がる事である。毎年一つの孤児院から一名、ブラッドハーレー家の養子となる子が出て、その子は歌劇団に入る事が出来るという実しやかな噂である。しかし、その噂の正体は、孤児という後腐れのない少女を連れてきて、無期刑の囚人達の性欲処理をさせるというものだ。
これは国内有数と言えども没落してゆく過程にある貴族・ブラッドハーレー家が、国と共犯者となってその家を保持し、かつ無期刑囚達の行動を統括する事が目的である。
基本的には救いなど全くない物語だ。少女達はブラッドハーレー家に入る事を夢に視て、おそろしい場所に送り込まれるとも知らずに、迎えの馬車に乗り込む。時にはブラッドハーレー家の養子に選ばれた子を憎み、その子を殺したりもする。しかし、彼女等を待っているのは、死ぬまで多数の男達に凌辱される運命だ。殺す以外は何をしてもいいという約束はあるのだが、腕を折ったり眼をえぐったりするのは自由である。毎日残酷な仕打ちを受けて衰弱し、長く生きられよう訳もない。そして、彼女達が塀の外へ出る事は決してない。何故ならば無期刑囚と同じで、外へ出られない事が最も有効な口止めとなるからである。
ラストで、この事実を唯一知り、貴族の時代の終焉を迎えた事で生き延びる少女が一人、描かれる。一つの時代の中で起こった狂気的な出来事を、重厚なタッチで描いた怪作である。